2010年8月21日土曜日

[vol.4]損保ジャパン


取材日/2010,8,19
取材/増田彩乃
宮城圭佑
大山高博
写真/大山高博

 最後の取材は損保ジャパンを訪問し、
コーポレートコミュニケーション企画部 CSR・環境推進室の市川さんにお話を伺いました。


--ISOを取得した後、維持するために何を行っていますか
 ISOは1年に1回定期的に審査があり、3年に一度更新する仕組みになっています。当社では、本社ビルと事務本部ビルでISOを取得しており、各部署それぞれが目標を設定して取り組んでいます。それらの場所に対して、内部的な監査のひとつとしてエコパトロールを行っています。
 2008年から、ISOの目標の中にCSRも組み込んでおり、社内でのCSR教育をどのように取り組むかということを部署ごとに設定していく仕組みを取っています。部署ごとに違うというのは、やはり自分たちで考えて、独自の目的や目標を構築していく方が、部署ごとの取り組みの進化が分かるということを目的としています。



--タイの天候インデックス保険とは
 タイでは、干ばつが起きると農作物が育たないため、耕機を売って生計を立てるということをしています。すると翌年は耕機が無いため、また農作業が出来ないという悪循環を生み出しています。
 そこで、例えば一定量の水が出なくなった際はそれに見合った農作物を保証するという天候インデックス保険を作りました。小規模な割合で保険を適応させ、翌年に繋がって行くようなサイクルを目的としています。最近ではこの保険の需要も高まっており、今後もニーズがあれば、海外でこのような保険が増えて行くこともあると考えています。



--ちきゅうくらぶとは何ですか
 社会貢献の一環として、ボランティア活動などを各地で行っています。
 ちきゅうくらぶの仕組みは、入社した従業員全員が自動的にこのクラブのメンバーになります。その中で有志の社員が毎月会費を払い、その会費を各地域でボランティアを行う際の活動費用として使っています。
 特に、力を入れていることは自分たちのノウハウを活かした貢献をするということです。例えば、代理店で自動車保険を扱っている工場では、車をメンテナスする技術を活かして、車椅子で介護をしている福祉施設に対して、車椅子のメンテナンスを行っています。



--ちきゅうくらぶは直接事業に結びつくことではないですが、続けて行く意味は何だと思いますか
この活動は強制しているものではなく、社員が自発的に行っていることで、活動内容は盲目の方の生活体験や地域のお祭りのボランティアなど、色々な活動があります。個人的に参加して感じたことは、自分が所属する支店だけでなく、隣のセクションや代理店、地域との交流があり、その中のコミュニケーションが大切だと思いました。このような活動を経験したことが無い人が多いと思うので、広い視野が持てる良い経験になると考えています。


 --一見、保険事業自体に直接関わらないように思える環境問題に対して、どのような取り組みを行っていますか
保険事業で商品の一部となる物が「紙媒体」です。約款、証券、保証内容が記された書類など、大量の紙が必要となってきます。そこで、紙の削減ということが環境活動として重要になってくると考えています。
具体的な取り組みは、約款の文字をユニバーサルデザインフォントという障害者向けの文字フォントに変更しました。このフォントは、文字サイズが小さくなったとしても読みやすいので、1ページの文字数を増やすことで、一つの約款に対して約30枚減らすことが出来ました。更に、今後の展開として、ウェブで約款を確認出来るようなサービスも検討しています。




--CSRを損保ジャパンの中に発信していく立場として、社会貢献の理念は何だとお考えですか
自分が実際現場に10年間いて、現場にいると社会貢献のことを常に意識するということはなかなか難しいと感じました。なので、この部署は、社員全体に気付きを与えるところであり、自発的に取り組むためのきっかけを作る場だと考えています。





--今後、損保ジャパンとして取り組むべき環境活動は何だとお考えですか
今年は、生物多様性という問題に関してNGOや生物多様性に関連している団体とリンクして環境教育を行っていくことを考えています。また、毎年行っている「市民のための環境公開講座」など、現在注目されている環境問題を色々な人に知ってもらうことが重要だと考えています。


--ありがとうございました。


取材を終えて…
保険企業は、市場の問題に対して何か改善策はないかと考えることがビジネスチャンスに繋がっていくと伺い、まさに保険企業が社会の舵を取る一つではないかと感じました。長年続けている「ちきゅうくらぶ」は、直接利益に繋がることではないとしても、「自分たちに出来る事は何か」と考える保険企業で重要とされる考え方の基盤に繋がっているのではないでしょうか。また、環境問題に対しても、約20年も前から本格的に取り組まれて来たということもあり、リスクマネジメントのノウハウが本業務以外にも活かされ、未来を見据えた環境活動を行っている印象を受けました。
保険という言葉は、学生の私にとってあまり馴染みの無いものでしたが、人の命を守るだけではなく、生活や環境を守るものでもあるということを知り、改めて、保険の役割の広さを実感しました。



担当者様プロフィール
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損保ジャパン コーポレートコミュニケーション企画部 CSR・環境推進室
市川 アダム 博康(Hiroyasu Adam Ichikawa)

損保ジャパンHP:http://www.sompo-japan.co.jp/
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2010年8月20日金曜日

【vol.3】株式会社 電通

取材日/2010,8,17

取材/増田彩乃
大山高博
宮城圭佑
写真/宮城圭佑


今回の取材では、大手広告企業、株式会社 電通を訪問し、

総務局 社会貢献・環境推進部長 沖津充男さんにお話を伺いました。
















--一広告企業として取り組むべき環境活動は何だとお考えですか

 大きく分けて3つあります。一つ目は、電通という会社自身がきちんと取り組みを行うということです。例えば、ビルから出るCO2を削減したり、社員一人ひとりがゴミの分別を強化したり、環境に配慮した活動を行うということです。二つ目は、取引先の方々と一緒に、既存のビジネス活動の中で出来ることに取り組んで行くということです。三つ目は、新たな社会的広がりを持って、すなわちソーシャルコミュニケーションという視点で出来ることを行っていくということです。



最近行った環境活動は…

 東京、大阪、名古屋の電通でペットボトルキャップを集めて、うちわを作り、社内で配りました。6月の環境月間を機に、1ヶ月で250kg、約10万個分のペットボトルキャップを集めることが出来ました。


うちわのデザインには、社内の若手クリエーターを起用。社員への環境意識を高める目的でこのプロジェクトに取り組まれたそうです


 また、今年1月に本社ビル執務室内の照明を全てLEDに換え、CO2削減に繋げました。さらに、見えないところでの取り組みとしては、ビルの地下にあるパイプにジャケットを掛け、エネルギーロスを無くす対策も行っています。水に関しても、中水(*1)を作るシステムを自社に備えています。なので、社員食堂などで出る排水を地下で処理し、自社で中水に作り替えてトイレの排水などにまわしています。同様に雨水も中水として活用しています。




-ペットボトルキャップなどのアイディアはどこから出るのですか

 社内には各部署に「エコ委員」という環境活動の旗振り役を設けています。社会貢献・環境推進部だけではなく委員を通して社内全体から、意見を集めて新しいプロジェクトを推進しています。




--エコ委員はいつから活動しているのですか
2005年5月にISO14001を取得した際、社内の環境体制を整える目的として、エコ委員が出来ました。エコ委員は「電通エコ・プログラム」の一環として日々の環境活動を推進しています。



--では、電通エコ・プログラムはどのような活動を行っているのですか

 まず、各局にいるエコ委員がISO認証の為に、今年は何について取り組んで行くのかということを推進していく活動があります。これは、ISOの規格に基づいて行われることですが、もう一つは、ISOに捕われない社内での環境活動を推進していくことです。


 2008年7月には、エコ・プログラムの推進を加速させるために「環境戦略会議」を設置しました。具体的には、会議の下に置かれる「環境戦略検討委員会」が社内だけに留まらず政府や企業・団体・マスメディア・生活者などの環境に関する動きを研究し、社内の関係部署で共有するようにしています。


その他の電通らしい取り組みも紹介して頂きました。



「環境スローガン」というものを社員とその家族を対象に募集する企画を行っています。

--2009年度最優秀賞--

【社員の部】

うちの自治体はゴミの分別にうるさい。

文句ではなく自慢です。


【家族の部】

一度、手を止めて周りの景色を見てください。

地球は、まだ、人を愛してくれている。




 この活動は社員への環境意識啓発のために行っていることです。入選作品の中から選ばれた作品を、ポスターにして社内に掲示しています。また、環境だけでなく人権に関してのスローガン募集も同時に行っています。

 その他、館内エコツアーを実施し、日頃見られないような環境に配慮された施設を、社員が見学出来る機会を設けています。あとは、エコ検定の受験料を支援するなどして、社員への環境意識向上を図っています。




--ユニークな活動の一つとして富士登山という活動がありますが、この活動は何ですか。


 電通富士登山は、新入社員と役員昇格者を中心に毎年行われる、戦前から続く伝統ある行事です。参加者には登山中のゴミ拾いを推奨しています。電通は富士山とご縁があるということで、過去には富士山エコツアーインストラクターの養成講座を社内で実施したこともありました。




自分の会社にだけではなく、業界への啓発活動として…

 最近は「環境」が入っていない広告は無いぐらい環境が当たり前になってきており、1947年から行っている広告電通賞に、2009年から環境広告賞を設置しました。また、環境活動が盛んになる反面、現在重要視されてきているものが、「グリーンウォッシュ」についてです。

 グリーンウォッシュとは、生活者に誤解を与える不適切な環境コミュニケーションを指します。電通では、制作する広告がグリーンウォッシュに陥らないためのガイドを作成し、社員教育の一環としています。



--今後、電通として力を入れて行きたい環境活動は何ですか

やはり、私たちの本業であるコミュニケーションの部分を活かした活動ですね。電通は、色々なメディアやクライアントの、広告を含めたコミュニケーションをサポートしています。そのサポートをする中で、色々な企業と一緒に環境活動を行っていくことで、更に世の中に発信することが出来ると考えています。
 また、コミュニケーションとは、単に企業の広告だけでなく、その企業の行動自体もコミュニケーションであると捉え、そこまで一緒に考えていくということが重要だと考えています。
 さらに、クライアントやメディア、政府などと協力して、世の中に良いことが起こる!ということが出来ると思うことが社員のやる気にも繋がってくるのだと思います。



中水(*1)…雨水や排水を再生処理してトイレや散水に利用する水のこと。上水と下水の中間に位置することから中水といわれている。




--ありがとうございました。



取材を終えて…

 クライアントやメディア、政府との協力を通して、世の中に良い変化をもたらしたいという想いを語って下さった沖津さん。日頃、私自身も色々な広告を目にし、新しい情報や気付きをもらっています。環境問題だけに留まらず、社会に新しい変化を生み出すためには、与えられた情報の核の部分を、受け手である私たちも興味深く見ようとすることが必要だと感じました。
 今回の取材で、特に印象的だった取り組みのひとつである「環境スローガン」。スローガンの内容自体もユニークで記憶に残りますが、何よりもスローガンを考えるために、環境について考える機会があるということが魅力だと感じました。電通らしいユニークな取り組みが編み出される裏側には、膨大な案を出さなければならない過程があるに違いありません。その厳しい過程で、環境問題と向き合うということが、何よりも環境問題を真剣に考える時間になっていて、それが社員の方々の環境意識の高さに繋がっているのではないでしょうか。




担当者様プロフィール
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株式会社 電通 社会貢献・社会推進部長
沖津 充男(Okitsu Mitsuo)


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2010年8月16日月曜日

[vol.1] キユーピー株式会社

取材日/2010,8,11
取材/増田彩乃
田中美紀
写真/中島剛史

念すべき第一回目の取材は、キユーピー株式会社に訪問しました。
今や日本の食卓には欠かせない存在となったキユーピーが取り組む環境問題とは何か、またキユーピーの社風についてお話を伺いました。

初めての取材で緊張する私たちを、まず受付で出迎えてくれたのは、
クリッとした目が印象的なキューピーちゃんと、かごいっぱいに盛られたゴーヤでした。
一歩足を踏み入れた瞬間から、キユーピーの温かい雰囲気が感じられる中
早速、社会・環境推進部の佐々木 吾朗さんにお話を伺いました。



--現在最も力を入れていらっしゃる環境への取り組みは何ですか
第一に、食品メーカーとしてはCO2と廃棄物の削減です。CO2削減は省エネ対策をはかり、特に廃棄物に関しては卵の殻を100%活用しようという取り組みを行っています。また100%活用する中で、少しでも高度な活用を心掛け、用途を広げて行くことに力を入れています。


--受付に飾られていたゴーヤは何ですか
クールビズの一貫として、3年前から始めたゴーヤビズです。いわゆる緑のカーテンと同じ働きですが、食べられるゴーヤに注目したことでより親しみやすく、この時期に行っていたゴーヤレシピ特集にも合わせ、インパクトのあるものを目指しました。ゴーヤビズは、従業員の環境活動への意識付けとして行っており、現在では各地の事業所でゴーヤビズが行われたり、自宅で始める従業員もいます。
ゴーヤビズによって、環境活動がより親しみやすく、社内が和める効果を生んでいるようでした。


--環境活動を継続して行う上で大切にされていることは何ですか
 企業の中で環境活動を推進していくためには、従業員のモチベーションを上げることが大切ですね。省エネやコスト削減に反映されるという、直接的に自分たちの事業に跳ね返ってくるといった活動に結びつけるということが、企業として持続的に活動を行うことに繋がります。
 更に、今後の課題としては企業としての環境活動を通して、従業員一人ひとりの意識を高めるということや普段のライフスタイルを変えるというところまで取り組んで行きたいですね。


--従業員一人ひとりの意識を高めるために、個人の意見をくみ取る職場作りとして何に取り組まれていますか
まだまだ課題は多いですね。ですが例えば、現場の提案に対して、頭ごなしに批判するのではなく、どうすれば実現出来るのかを考え、現場の意見を応援する姿勢をとっています。いかに現場の力を発揮させていくかということは、環境活動に限らず、普段の仕事のスタイル全体において言えることです。


--新入社員も意見を出しやすい雰囲気がありますか

「正しいことは誰が言っても正しい」という創始者の言葉があり、何か意見を言う時に、立場に左右されないという考え方を持っています。また、実際に現場で取り組むのは社長ではなく現場の従業員なので、そうした現場の意見を尊重しています。この考え方は、社会・環境報告書にも現れており、始めのページを開くとまずは従業員たちの笑顔の写真が載っていて、次に社長の挨拶という構成になっています。
この順番で一番しっくり感じるということは、やはり従業員が全ての基盤になっているという考えが浸透しているからだと思います。


--では、新入社員に対するCSR教育はどのように行っていますか
CSRを特別なこととして取り組むのではなく、あたり前のこととして取り組めるようにCSRという言葉はあえて使わず、「社会活動」や「環境活動」と具体的に言い換えています。新入社員に関しては、企業理念を強く打ち出しています。普段のやりとりの中で一つ一つ伝えていくということが最終的には、企業の考え方としてCSRと呼ばれるものに繋がって行くと考えています。


--現時点まで、様々な環境活動の成果を出されていますが、どのような取り組み方が実を結ぶ結果に繋がったとお考えですか
まずは、やらなければならない活動であるということですね。また、目標設定の段階である程度達成できるものや具体的なものを設定するようにしたことだと思います。


--今後キユーピーとして取り組むべき環境活動は何だとお考えですか
基本的には、現在行っているCO2や廃棄物削減の活動を継続させることが大きいと思います。新しい課題としては、それらの範囲を広げていくことだと考えています。


--ありがとうございました


取材を終えて…
キユーピーがキユーピーらしくあるためには、100出た案から1を選ぶという厳しい裏側もあると話して下さった佐々木さん。その背景には100の案が集まる程の、意見を出しやすい社内の雰囲気があるのだと分かりました。
胸に「28℃」と書かれたバッジを着けられた佐々木さんからは、キユーピーの社員の皆さんが出来ることからコツコツと環境問題に取り組まれている姿勢が感じられました。



担当者様プロフィール
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キユーピー株式会社  社会・環境推進部
佐々木 吾朗(Sasaki Gorō) 


キユーピーの環境活動:

社会と環境について語るブログ:
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2010年8月15日日曜日

[vol.2] 森ビル株式会社

取材日/2010,8,11
取材/増田彩乃
田中美紀
写真/中島剛史


六本木ヒルズや表参道ヒルズ、ラフォーレ原宿など多くの注目を浴びる施設を手掛ける森ビル株式会社取材させて頂きました。
本社のある六本木ヒルズには多くの緑が溢れており、高層ビルを見上げると青く澄み渡った空を背景に、緑の中にビルがすっぽりと覆われているような感覚でした。

森ビルが目指す都市開発とは何なのか、今後の日本はのような都市へと進化していくのか。環境推進室、武田 正浩さんにお話を伺いました。





--森ビルが理想とするVertical Garden Cityとはどのような構想なのですか
Vertical Garden Cityとは、「立体的な緑園都市」と言われています。都心の開発をするにあたって、細分化された土地だと土地の面積が小さくて、それぞれの土地の権利の中で建物を作っていくとなると、どんどん近接して密集した街になってしまいます。そこで、大きな土地を共同開発として、なるべく高層化して建物を建てることで「空地」という建物が建っていない面積をたくさん作り、その「空地」を緑や人に解放していこうという考え方です

(森ビル株式会社HPより:Vertical Garden City 構想図)

--東京の街をVertical Garden Cityにすることは可能とお考えですか
可能です。ですが、実際六本木ヒルズのような一つの街を作っていくためには、たくさんの権利者さんや利用される方の意見をまとめることから構想を練り上げて行くまで、20年程かけて行っています。なので、急に全てが出来るものではないですが、技術や制度面の見通しはあるので不可能な話ではないと考えています。


--高層ビルというと環境にはあまり良くないと思われがちですが、環境に良いとされるメリットは何ですか
バブル期ぐらいの建物は、いわゆるコンクリートジャングルを作っているイメージだと思いますが、Vertical Garden Cityのコンセプトで作っていくことで、あたかも緑の中にビルが建っているという感じにすることができます。作り方次第で高層ビルも良いと考えられます。



--環境のため以外で、緑を増やす目的は何だとお考えです
そもそも、自然の環境は人間にとっても大切だと思います。例えば、週末は山や海に出掛けて、自然の多い環境に行きたいと皆さん思われますよね。なので、そのような環境を都市の中で少しでも実現するため、また自然の多い環境がオフィスでの作業効率を上げるという調査結果もあるので、ワーカーの知的生産性を上げるためにも、緑を増やすことが効果的だと考えています。



--都市開発を進める中で、国や国民から一番求められている環境への配慮は何だとお考えですか
今はCO2、温暖化の問題が世界的な課題としても注目されているので、第一にはそれらの問題への取り組みだと考えています。大きな開発を行う際には、例えば、蓄熱システムや廃熱を利用することなど、小さい建物では採用出来ないようなより効率の良いシステムや機器類を採用しています。


--今年4月から、都のCO2削減義務制度も始まりましたが、始まる前と後では対策として大きな変化はありましたか
制度が出来る前から様々な取り組みを行っていたので、大きく変えることはありませんでした。制度が出来たことで改めて色々な観点での見直しや、多少コストを掛けてでも、削減に起用出来る変更を行っています。


--新しいビルを作る以外に、既存のビルを維持していくために行っていることは何ですか
ナンバービルと呼ばれる古いビルの改修を行っています。現在の耐震基準に合わせる改修工事と同時に、環境対策も組み込んで、合理的な改修を行っています。


--ビルを環境に配慮しながら持続させるために、テナントとの協力で行っている環境対策はありますか
特に、都のCO2削減義務制度が始まる少し前から、テナント協議会を作り、対話を始めました。イベントとして、国が主催しているライトダウンキャンペーン(*2)に参加しました。六本木ヒルズでは景観照明だけではなく、テナントの中まで照明を消すという取り組みをしました。



--森ビルの会社内で行っている環境活動はありますか
社員への環境教育として、開発や現場にあまり関係ない社員にもセミナーを開いたりしています。また具体的には、昼間の消灯や残業時間の消灯などを行っています。






--環境推進室を立ち上げるまでの経緯、また現在の活動内容を教えて下さい
今から2年前に環境推進室を立ち上げました。きっかけは、さらにその2年ほど前から、世の中で環境問題が注目されるようになり、社内でも環境に対応出来る部署が必要だと感じ立ち上げるまでに至りました。現在は、都条例の対応や、新規プロジェクトにおけるお客様目線での環境へのリクエストを検討したり、プロジェクトに取り入れていく活動をしています。


--今後、日本が持続して行ける社会であるためにどのように取り組むべきだとお考えですか
国際都市競争に勝っていくために、まず東京の魅力向上させる一つとして、都市の構造を変えて行かなければならないと考えています。Vertical Garden Cityを実現させることで、これからの都市のモデルとして海外にも展開できる都市にしていく必要があると思います。


--将来、東京が良い都市モデルとして発展していく見込みはあるとお考えですか
十分あります。ただ、海外はものすごい勢いで発展しているため、日本の開発もスピードをあげなければなりません。スピード上げるためには、やはり政策的な投資が必要です。作り上げる都市のデザインを描いて、それを早く作るということが重要ですね。


--ありがとうございました


取材を終えて…
新しい都市モデル、Vertical Garden Cityは多くの緑の中で生活できるという、最も環境に配慮された理想都市であるということを語って下さった武田さん。都市開発と環境問題は相反するものと思われがちですが、都市開発こそ環境に配慮した未来を作り出す術なのだと感じました。


担当者様プロフィール
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森ビル株式会社 環境推進室
武田 正浩(Takeda Masahiro)


(*1)森ビル株式会社HP http://www.mori.co.jp/
(*2)ライトダウンキャンペーンとは?…2003年より温暖化防止のため環境省が行っている、ライトアップ施設や家庭の電気を消していただくよう呼び掛ける「CO2削減/ ライトダウンキャンペーン」です。これは、ライトアップに馴れた日頃生活の中、電気を消すことでいかに照明を使用しているかを実感し、地球温暖化問題について考ることを目的としたキャンペーンです。(ライトダウンキャンペーン2010HP http://coolearthday.jp/ )

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環境とCSRの専門メディアecool(エクール)