2010年8月15日日曜日

[vol.2] 森ビル株式会社

取材日/2010,8,11
取材/増田彩乃
田中美紀
写真/中島剛史


六本木ヒルズや表参道ヒルズ、ラフォーレ原宿など多くの注目を浴びる施設を手掛ける森ビル株式会社取材させて頂きました。
本社のある六本木ヒルズには多くの緑が溢れており、高層ビルを見上げると青く澄み渡った空を背景に、緑の中にビルがすっぽりと覆われているような感覚でした。

森ビルが目指す都市開発とは何なのか、今後の日本はのような都市へと進化していくのか。環境推進室、武田 正浩さんにお話を伺いました。





--森ビルが理想とするVertical Garden Cityとはどのような構想なのですか
Vertical Garden Cityとは、「立体的な緑園都市」と言われています。都心の開発をするにあたって、細分化された土地だと土地の面積が小さくて、それぞれの土地の権利の中で建物を作っていくとなると、どんどん近接して密集した街になってしまいます。そこで、大きな土地を共同開発として、なるべく高層化して建物を建てることで「空地」という建物が建っていない面積をたくさん作り、その「空地」を緑や人に解放していこうという考え方です

(森ビル株式会社HPより:Vertical Garden City 構想図)

--東京の街をVertical Garden Cityにすることは可能とお考えですか
可能です。ですが、実際六本木ヒルズのような一つの街を作っていくためには、たくさんの権利者さんや利用される方の意見をまとめることから構想を練り上げて行くまで、20年程かけて行っています。なので、急に全てが出来るものではないですが、技術や制度面の見通しはあるので不可能な話ではないと考えています。


--高層ビルというと環境にはあまり良くないと思われがちですが、環境に良いとされるメリットは何ですか
バブル期ぐらいの建物は、いわゆるコンクリートジャングルを作っているイメージだと思いますが、Vertical Garden Cityのコンセプトで作っていくことで、あたかも緑の中にビルが建っているという感じにすることができます。作り方次第で高層ビルも良いと考えられます。



--環境のため以外で、緑を増やす目的は何だとお考えです
そもそも、自然の環境は人間にとっても大切だと思います。例えば、週末は山や海に出掛けて、自然の多い環境に行きたいと皆さん思われますよね。なので、そのような環境を都市の中で少しでも実現するため、また自然の多い環境がオフィスでの作業効率を上げるという調査結果もあるので、ワーカーの知的生産性を上げるためにも、緑を増やすことが効果的だと考えています。



--都市開発を進める中で、国や国民から一番求められている環境への配慮は何だとお考えですか
今はCO2、温暖化の問題が世界的な課題としても注目されているので、第一にはそれらの問題への取り組みだと考えています。大きな開発を行う際には、例えば、蓄熱システムや廃熱を利用することなど、小さい建物では採用出来ないようなより効率の良いシステムや機器類を採用しています。


--今年4月から、都のCO2削減義務制度も始まりましたが、始まる前と後では対策として大きな変化はありましたか
制度が出来る前から様々な取り組みを行っていたので、大きく変えることはありませんでした。制度が出来たことで改めて色々な観点での見直しや、多少コストを掛けてでも、削減に起用出来る変更を行っています。


--新しいビルを作る以外に、既存のビルを維持していくために行っていることは何ですか
ナンバービルと呼ばれる古いビルの改修を行っています。現在の耐震基準に合わせる改修工事と同時に、環境対策も組み込んで、合理的な改修を行っています。


--ビルを環境に配慮しながら持続させるために、テナントとの協力で行っている環境対策はありますか
特に、都のCO2削減義務制度が始まる少し前から、テナント協議会を作り、対話を始めました。イベントとして、国が主催しているライトダウンキャンペーン(*2)に参加しました。六本木ヒルズでは景観照明だけではなく、テナントの中まで照明を消すという取り組みをしました。



--森ビルの会社内で行っている環境活動はありますか
社員への環境教育として、開発や現場にあまり関係ない社員にもセミナーを開いたりしています。また具体的には、昼間の消灯や残業時間の消灯などを行っています。






--環境推進室を立ち上げるまでの経緯、また現在の活動内容を教えて下さい
今から2年前に環境推進室を立ち上げました。きっかけは、さらにその2年ほど前から、世の中で環境問題が注目されるようになり、社内でも環境に対応出来る部署が必要だと感じ立ち上げるまでに至りました。現在は、都条例の対応や、新規プロジェクトにおけるお客様目線での環境へのリクエストを検討したり、プロジェクトに取り入れていく活動をしています。


--今後、日本が持続して行ける社会であるためにどのように取り組むべきだとお考えですか
国際都市競争に勝っていくために、まず東京の魅力向上させる一つとして、都市の構造を変えて行かなければならないと考えています。Vertical Garden Cityを実現させることで、これからの都市のモデルとして海外にも展開できる都市にしていく必要があると思います。


--将来、東京が良い都市モデルとして発展していく見込みはあるとお考えですか
十分あります。ただ、海外はものすごい勢いで発展しているため、日本の開発もスピードをあげなければなりません。スピード上げるためには、やはり政策的な投資が必要です。作り上げる都市のデザインを描いて、それを早く作るということが重要ですね。


--ありがとうございました


取材を終えて…
新しい都市モデル、Vertical Garden Cityは多くの緑の中で生活できるという、最も環境に配慮された理想都市であるということを語って下さった武田さん。都市開発と環境問題は相反するものと思われがちですが、都市開発こそ環境に配慮した未来を作り出す術なのだと感じました。


担当者様プロフィール
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森ビル株式会社 環境推進室
武田 正浩(Takeda Masahiro)


(*1)森ビル株式会社HP http://www.mori.co.jp/
(*2)ライトダウンキャンペーンとは?…2003年より温暖化防止のため環境省が行っている、ライトアップ施設や家庭の電気を消していただくよう呼び掛ける「CO2削減/ ライトダウンキャンペーン」です。これは、ライトアップに馴れた日頃生活の中、電気を消すことでいかに照明を使用しているかを実感し、地球温暖化問題について考ることを目的としたキャンペーンです。(ライトダウンキャンペーン2010HP http://coolearthday.jp/ )

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