2010年8月20日金曜日

【vol.3】株式会社 電通

取材日/2010,8,17

取材/増田彩乃
大山高博
宮城圭佑
写真/宮城圭佑


今回の取材では、大手広告企業、株式会社 電通を訪問し、

総務局 社会貢献・環境推進部長 沖津充男さんにお話を伺いました。
















--一広告企業として取り組むべき環境活動は何だとお考えですか

 大きく分けて3つあります。一つ目は、電通という会社自身がきちんと取り組みを行うということです。例えば、ビルから出るCO2を削減したり、社員一人ひとりがゴミの分別を強化したり、環境に配慮した活動を行うということです。二つ目は、取引先の方々と一緒に、既存のビジネス活動の中で出来ることに取り組んで行くということです。三つ目は、新たな社会的広がりを持って、すなわちソーシャルコミュニケーションという視点で出来ることを行っていくということです。



最近行った環境活動は…

 東京、大阪、名古屋の電通でペットボトルキャップを集めて、うちわを作り、社内で配りました。6月の環境月間を機に、1ヶ月で250kg、約10万個分のペットボトルキャップを集めることが出来ました。


うちわのデザインには、社内の若手クリエーターを起用。社員への環境意識を高める目的でこのプロジェクトに取り組まれたそうです


 また、今年1月に本社ビル執務室内の照明を全てLEDに換え、CO2削減に繋げました。さらに、見えないところでの取り組みとしては、ビルの地下にあるパイプにジャケットを掛け、エネルギーロスを無くす対策も行っています。水に関しても、中水(*1)を作るシステムを自社に備えています。なので、社員食堂などで出る排水を地下で処理し、自社で中水に作り替えてトイレの排水などにまわしています。同様に雨水も中水として活用しています。




-ペットボトルキャップなどのアイディアはどこから出るのですか

 社内には各部署に「エコ委員」という環境活動の旗振り役を設けています。社会貢献・環境推進部だけではなく委員を通して社内全体から、意見を集めて新しいプロジェクトを推進しています。




--エコ委員はいつから活動しているのですか
2005年5月にISO14001を取得した際、社内の環境体制を整える目的として、エコ委員が出来ました。エコ委員は「電通エコ・プログラム」の一環として日々の環境活動を推進しています。



--では、電通エコ・プログラムはどのような活動を行っているのですか

 まず、各局にいるエコ委員がISO認証の為に、今年は何について取り組んで行くのかということを推進していく活動があります。これは、ISOの規格に基づいて行われることですが、もう一つは、ISOに捕われない社内での環境活動を推進していくことです。


 2008年7月には、エコ・プログラムの推進を加速させるために「環境戦略会議」を設置しました。具体的には、会議の下に置かれる「環境戦略検討委員会」が社内だけに留まらず政府や企業・団体・マスメディア・生活者などの環境に関する動きを研究し、社内の関係部署で共有するようにしています。


その他の電通らしい取り組みも紹介して頂きました。



「環境スローガン」というものを社員とその家族を対象に募集する企画を行っています。

--2009年度最優秀賞--

【社員の部】

うちの自治体はゴミの分別にうるさい。

文句ではなく自慢です。


【家族の部】

一度、手を止めて周りの景色を見てください。

地球は、まだ、人を愛してくれている。




 この活動は社員への環境意識啓発のために行っていることです。入選作品の中から選ばれた作品を、ポスターにして社内に掲示しています。また、環境だけでなく人権に関してのスローガン募集も同時に行っています。

 その他、館内エコツアーを実施し、日頃見られないような環境に配慮された施設を、社員が見学出来る機会を設けています。あとは、エコ検定の受験料を支援するなどして、社員への環境意識向上を図っています。




--ユニークな活動の一つとして富士登山という活動がありますが、この活動は何ですか。


 電通富士登山は、新入社員と役員昇格者を中心に毎年行われる、戦前から続く伝統ある行事です。参加者には登山中のゴミ拾いを推奨しています。電通は富士山とご縁があるということで、過去には富士山エコツアーインストラクターの養成講座を社内で実施したこともありました。




自分の会社にだけではなく、業界への啓発活動として…

 最近は「環境」が入っていない広告は無いぐらい環境が当たり前になってきており、1947年から行っている広告電通賞に、2009年から環境広告賞を設置しました。また、環境活動が盛んになる反面、現在重要視されてきているものが、「グリーンウォッシュ」についてです。

 グリーンウォッシュとは、生活者に誤解を与える不適切な環境コミュニケーションを指します。電通では、制作する広告がグリーンウォッシュに陥らないためのガイドを作成し、社員教育の一環としています。



--今後、電通として力を入れて行きたい環境活動は何ですか

やはり、私たちの本業であるコミュニケーションの部分を活かした活動ですね。電通は、色々なメディアやクライアントの、広告を含めたコミュニケーションをサポートしています。そのサポートをする中で、色々な企業と一緒に環境活動を行っていくことで、更に世の中に発信することが出来ると考えています。
 また、コミュニケーションとは、単に企業の広告だけでなく、その企業の行動自体もコミュニケーションであると捉え、そこまで一緒に考えていくということが重要だと考えています。
 さらに、クライアントやメディア、政府などと協力して、世の中に良いことが起こる!ということが出来ると思うことが社員のやる気にも繋がってくるのだと思います。



中水(*1)…雨水や排水を再生処理してトイレや散水に利用する水のこと。上水と下水の中間に位置することから中水といわれている。




--ありがとうございました。



取材を終えて…

 クライアントやメディア、政府との協力を通して、世の中に良い変化をもたらしたいという想いを語って下さった沖津さん。日頃、私自身も色々な広告を目にし、新しい情報や気付きをもらっています。環境問題だけに留まらず、社会に新しい変化を生み出すためには、与えられた情報の核の部分を、受け手である私たちも興味深く見ようとすることが必要だと感じました。
 今回の取材で、特に印象的だった取り組みのひとつである「環境スローガン」。スローガンの内容自体もユニークで記憶に残りますが、何よりもスローガンを考えるために、環境について考える機会があるということが魅力だと感じました。電通らしいユニークな取り組みが編み出される裏側には、膨大な案を出さなければならない過程があるに違いありません。その厳しい過程で、環境問題と向き合うということが、何よりも環境問題を真剣に考える時間になっていて、それが社員の方々の環境意識の高さに繋がっているのではないでしょうか。




担当者様プロフィール
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株式会社 電通 社会貢献・社会推進部長
沖津 充男(Okitsu Mitsuo)


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